明日への希望




小耳に挟んだんだけど。

人は、全盛期を終えることを、
「陽が沈む」と例えることがあるらしいね。

なんでかな?
夕方の太陽くんは、朝の太陽くんと変わらず、
とてもキレイに輝いているのにね。

それに。

夕方の太陽くんが、ぼくを紅く染めると、
「明日は晴れそうだね」って、
嬉しくなる人も多いんだよ。

明日への希望を与える夕方の太陽くんは、
すごい存在だなーって、
ぼくは、いつも思っているんだ。

ポーカーフェイス


ぼくはおこっている。
原因は、きみがぼくのことを
忘れてばかりいるから。

ぼくは、いつもきみを見てるのに、
たまにはきみも、ぼくを見てくれたっていいじゃないか。

忙しいからって、
そんなの理由にならないよ。

だけど。

ほんとは、ぼくのいかりが、
ただのぼくの勝手な希望から来ていることは、
分かってるんだ。

だから、きみに知られたくなくて、
ぼくは、雲でぼくをかくしたんだ。

なのに、ぼくの気持ちはバレバレだったようだね。

でも、おかげで、
きみが、目を細めてぼくを見てくれたんだ。

ポーカーフェイスがへたくそで、
今日ばかりは良かったよ。


どんよりな一日。




「今日はどんよりだね」って。
みんな、何でぼくの気持ちがわかるのかな?

そうなんだ。
きっかけはたぶんささいなことだったのに、
もう何をするのもおっくうなほど、
ふさぎこんでしまったんだ。

なんだか、みんなの気分まで
「どんより」させてしまったようで、
ちょっぴり心が傷むよ。

でもね。
どれだけ、ぼくが「どんより」していても、
そのうち、
風くんが雲を吹き飛ばしてしまったり、
太陽くんが思い切りにこにこしてくれたりすると、
このままではいられなくなって、
また元気な青いぼくに戻ってしまうんだ。

わかってるんだけどね。

わかってるからかな。
今日は「どんより」な気持ちに浸りたい気分なんだ。

縁の下の力持ち。



もうちょっと赤くなるまで待とうよ。
って、きみがあいつに言っている。

ぼくには、きみが、
あいつと少しでも長く一緒にいたい
口実だってことは、バレバレさ。

だから、ぼくは、
太陽くんが別の国に行くからと、
赤い色をいっぱい置いていっても、
なるべく染まらないように、
ずっとずっと我慢したんだ。

結局最後は、ちょっとだけ赤くなってしまったけどね。
これでも、大分頑張ったんだよ。

なあんだ、大して赤くならなかったね。
って、きみが言ったけど、
哀しくなんかないよ。

きみが、あいつと一緒にいたいっていう、
願いを叶えられたのだから、それでいいんだ。

ほんとだよ。



情けなくても大丈夫?


不安がずっと止まらないんだ。

不安、不安、不安、不安、ふあん・・・

妄想がどんどん膨らんで、
どこまでがほんとのことで、
どこからがうそかもしれないことなのかも、
もう、ぼくにはわからない。

わかったのは、こんなにも
きみのことをすごくすごく思ってたんだってこと。

こういう状況を
人は「おでこにしわがよってるよ」なんて言うのかな?

小さな不安を、
こんなにまで大きくしてしまったぼくは、
とっても情けないね。
自分のことがすっかり嫌になってしまったよ。

でも、なぜか、
「きれいな空だねって」・・・
今日のぼくは、なかなか評判がいいみたいだ。

こんなに情けないぼくでも、
魅力的だと思ってくれる人がいるんだね。

きみのことを思って生まれた不安だから、
情けなくても、大丈夫ってことなのかな。

今このとき


なんでもない、なんにもない。
されるがまま、なすがまま。
ただぼんやりと、今を過ごしている。

「今日は穏やかで平和な日だな〜」
と、みんなが口々に言うけど、
ぼくの方は見てくれないんだね。

そりゃそうだよな。

ぼくの青さも、
雲の作り方も、散りばめ方も、流し方も
なーんの工夫もしてないんだから。

でも。

今この状態を、
また作ってねと言われたとしても、
ぼくは、二度と作ることはできないんだよ。

なんでもない、なんにもない。
されるがまま、なすがまま。
ただぼんやりと、過ごしている今だけど、
それでも、今のぼくの姿は、
今このときしか、存在しないんだ。

うれしいのに複雑。


今夜は。

何度も、何度も。
ぼくの方を見てくれるんだね。

お目当ては、ぼくじゃないって知ってるけど、
仕方ないね。ぼくから見ても、
今日の月くんは、かっこいいもん。

せめて、ぼくは、
闇に徹して、雲を吹き飛ばして、
きみが月くんを見つめる邪魔者を
消してあげるんだ。

「うわぁ、きれい!」
って、うっとりしているきみを見て、
すごくうれしいのに、
ちょっぴり淋しくなってしまうのは、
なぜだろうね。